¥2,200
P2P(ピーツーピー)第〇号
A5判、136頁(大判ポスターを折ったカバー付)
編集|極セカイ研究所(黒嵜想、沢田朔)
編集協力|長谷川新、福尾匠、藤村南帆、布施琳太郎、米澤柊
デザイン|中家寿之
アートワーク|梅沢和木
税込価格:2,200円
批評家の黒嵜想が所長を務める「極セカイ研究所(キョクセカイケンキュウジョ/略称:極セ研)」から発行される不定期刊行物の第〇号。本誌は主に南極を中心とした極域について、主に文化的側面からの総合的な研究・批評を行うことを目的とする「極セ研」によるこれまでの活動の成果をまとめた冊子。
【目次】
「南極の人類学」のスケッチ:森下翔
南極で料理をする際の心得:北田克治
極論:黒嵜想
極北の時空:大石侑香
動中の動、新しき道:アレクサンドル・ポノマリョフ インタビュー
南極ビエンナーレの未来:鴻野わか菜
<創刊のあいさつ>
南極大陸の氷が溶ける。心配ごとはさまざまだ。
これを物理的な「海面上昇」の兆候とすれば、地球温暖化を阻止すべく環境保護活動のステートメントを導くことができる。
または比喩的な「アイスブレイク」の危機とすれば、軍事的な緊張を解くべく平和維持のアクションが導かれる。
あるいは夢想的な「太古の封印」の解放とすれば、神話的な厄災を防ぐべくSFめいたフィクションが導かれる。
人類が南極点へ到達してから、100年以上が経過した。 「国際地球観測年」を契機として作成・発効された南極条約により、南極大陸においては一切の戦闘行為と、領土主張が凍結された。以来この地は、一方では科学者たちによる国際的な協働のもと観測の対象とされ、他方では人類文明あるいは地球の代表地、つまり「平和」や「人類以前/以後」の世界を象徴するジオラマとして扱われてきた。
極大なタイムスケールでわれわれ人類の文化・文明を相対化し、地球の来たるところと行く末を知らせる南極大陸は、現実の国際政治から虚構の物語にいたるまで、世界の方針を占う場所として利用されている。
つまり、南極が有するもっとも巨大な資源とは「イメージ」である。
しかし極地のイメージを利用して作成されたさまざまな世界理解は、数多くの参照とその広範な影響にもかかわらず、人文的・思想的な関心の外におかれている。そして極地をめぐる関心のほとんどもまた、科学的あるいは政治学的なものに占められているように思える。
「極セカイ研究所」は以上のような問題意識のうえで、極地をめぐる批評的な航路を試すために生まれました。批評誌『P2P』の創刊もまた、そのプロジェクトの一環です。
氷の下には、どんなイメージが、「セカイ」が埋まっているのか——。
乗船受付が始まります。
(黒嵜想)