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2025/07/11 16:22

マダム ボンジュール・ジャンジ新刊絵本『HUGたいそう』出版記念
いちにちまるごとHUGたいそう
開催日時:6月28日(土)、11時 ~ 21時
出演:大塚隆史、末浪伸二、マダム ボンジュール・ジャンジ
トークイベント「表現とセクシュアリティ──1 秒先の未来」
 

マダム ボンジュール・ジャンジ(以下ジャンジ):みなさん、こんばんは。トークイベントにいらしてくださっている方、ありがとうございます。18 時からの「HUG たいそう」に参加された方、おつかれさまでした〜。

ここからの時間は、私、マダム ボンジュール・ジャンジと、ゲストに、造形作家でバー「タックスノット」の店主である大塚隆史さん、そして映像作家で絵本作家、保育士もされている末波伸二さんの、豪華なおふたり──なかなかね、ふたりそろってるのは珍しいかな──をお迎えして、ゆるゆるとお話していきたいと思っております。

大塚隆史さん(以下、タック):よろしくおねがいします。

末浪伸二さん(以下、伸二):よろしくおねがいします。

ジャンジ:最初に、「HUG たいそう」の背景をちょっと私からご説明させていただいて、そのあと、おふたりにお話いただきたいと思います。

2001 年に、ワタリウム美術館が「アート・1日小学校展」を開催しました。その時に、友人で現代美術家のアキラ・ザ・ハスラーさんが、私と、オナン・スペルマーメードさんと、Busybee さんに声をかけて4人で「ハイ!キング HIKING」というユニットをつくり

ました。最初は性教育がテーマだったけど、子どもたちが対象なので「HUG」になりました。

展示とか映像作品とかワークショップとか、いろいろやりました。その中で私が、ラジオ体操みたいな体操をやりたいと言いだし、期間中ずっと毎日夕方5時から「HUG たいそう」をやりました。

アキラさんから連絡を受けた時は、対象は子どもっていうことだったので、一瞬どうしようと思ったんですが、新しいことはおもしろそうだと、 「うん」 と返事しました。やってみたらすごい子どもに助けられた。特に、館長の和多利家の子どもたちがいろいろ参加しくれて。楽しかったから続けてきた。気がついたら 24 年です。決して「HUG たいそう」を続けよう!とか「なんとかせねば〜!」とかいってたわけじゃなくて。

先月、はじめてパフォーマンスを本という形で出版できて、それを和多利浩一さんに届けたら「じゃあワタリウムで何かやろう」と言ってくださって、オン・サンデーズの草間さんがたくさん助けてくれて、今「いちにちまるごと HUG たいそう」をやっています。私は、タックさんと伸二さんが作った『ダイアウルフとタイコたたき』という絵本がすごい好きで。タックさんには書籍『HUG たいそう』にモデルとして出ていただいたり、保育士をしている伸二さんには読んだ感想をいただいていたりしていたので、おふたり一緒にトークイベントに出ていただこう、ということになりました。

 

 

●自分の中にある子どもが、子どもに反応する

ジャンジ:さて、前置きが長くなりましたが、おふたりに書籍『HUG たいそう』を読んだ感想をお聞きしてもいいですか? そして、今日「HUG たいそう」してたけど、どーですか? 率直に。

タ ッ ク:正直ね、僕ね、子どもって、ほんっと苦手なんですよ。近づいてくると、んーーーって手でバリア作るぐらいに苦手。僕、今年 77 歳になるんだけど、僕の若い頃って、ゲイで子どもを持つなんてありえない時代だった。僕は小さい頃から家庭を持つとかそういうことは無理なのかな、ましてや子どもなんて自分の人生には絶対入ってこないもんだ、ようするに、「子どもが欲しいなんて思ったら負け!」って思って生きてたんです。そしてあとね、昔のゲイの人って、女性と結婚して家庭を持つってよくあった。僕は「ゲイなのに奥さんにそのこと言わないで結婚するって、どうなの?」って考えるタイプだったんです。だけど、「結婚したいんだ」って言うゲイの人に「なんで?」って聞いて、「だって子どもが欲しいんだもん」って答えられると、こっちが黙んなきゃいけないような感じだった。「子どもが好き」っていうことが、なんか、自分が決めて生きていこうとしていることに反しているような気持ちがある。そんなこともあって子どもが苦手だった。ずーっとそう生きてきた。

で、この人(伸二さん)は、僕のパートナーで 20 年ぐらい一緒なんですけど、この人と歩いているとね、子どもがいるとひゅっと見て手を振ったりするんですよ。僕は「えぇ〜 ?!」って感じで、ちょっと避けたくなるような感じがあった。そんな自分だった。まぁ、そういう流れのなかで、ジャンジの書籍『HUG たいそう』に関わってください、そして「HUG たいそう」に参加してくださいといわれて、ん〜そっかぁ、じゃあやってみるかなって。書籍『HUG たいそう』の撮影の時はね、子どもはたいそうの中には参加してなかったんだけど、すぐ横で子どもたちが遊んでいてなんだかいぶかしげにこっちを見ている。「あっ子どもだ」 「こんなところにいるな〜」って。できあがった本を見たら、なんか「子どもだから苦手」って思っていたんだけれど、自分の中にある子どもみたいなものが、子どもに反応するんだなって思った。 「え〜こんな、いいお爺さんにたいそうなんてさせないでよ。はい!ぱぁ〜〜〜〜っ!」なんてやっているうちに、ちょっと鎧がとれる感じがありました。

ジャンジ:タックさんは撮影の時、最初は「見ててもいいんでしょ」っていってたんだけど、最後は地面に寝そべって「地球 HUG」もやってたもんね。

タ ッ ク:おもしろい体験でした。

 

 

●子どもがはじめて自己主張するのが「やだ!」

ジャンジ:伸二さん、どうですか?

伸    二:僕は 34 年保育士をやっています。で、タックのパートナーをやっています。うちはびっくりするほど真逆な人間だなぁと、それが真逆なだけに表裏一体だな、といつも感じているんです。ハグについては、この人、大好きなんです。触れることが大好きで、人と関わって、ぎゅっとスキンシップすることが大好きなんです。僕は職業柄、子どもが大好きでなんですけれど、ハグってすごく苦手なんです。今日一緒に「HUG たいそう」をやる時も、ものすごい緊張感がある行為で。

ジャンジ:え、よくやってましたね(笑)

伸  二:なので、ふたりで歩いていると、タックは触れたくて寄ってくるんですね。肩を寄せてくるんですけれど、僕はだんだん避けていって、ガザガザガザと植え込みに当たる。それで、ぐるりと逆側にまわるんですけれど、そしたらまたタックが寄ってきて「あぶない、あぶない、あぶない」ってなる、っていうぐらい。ハグに関しても、子どもに関しても全く逆っていうおもしろいふたりでコンビになってるんです。

書籍『HUG たいそう』の僕が一番気に入っているところなんですけれど、「やだ!」を言うページがあるんです。僕は、就学前の小さなお子さんに関わっているんですけれど、この「やだ!」をどう伝えようか考えてるんです。子どもがはじめて自己主張するのが、「やだ!」だと思うんです。子どもが、無自覚に、気に入られたいな〜とか親によく思われたいな〜とか、大人に喜んでもらいないな〜って気持ちが働いちゃって、「オッケー!」は実は、こっそりオッケーじゃなかったりする。そんななかで、「やだ!」って言うのは素晴らしいことだよって、どうやって伝えていこうと考えてる。この「HUGたいそう」では、肉体を持って、ちゃんと「やだ!」って伝える場面が描かれているのが、素晴らしいことだなと思いました。

 

 

●大人も「やだ!」というのはとても難しい

伸  二:今日「HUG たいそう」をはじめてやってみた感想は、自分もとても「やだ!」というのはとても難しいなと思いました。

ジャンジ:うん。

伸  二:やっぱり、「やだ!」って練習が必要なんだな、と。実は、自分も子どもの頃から「やだ!」って言えていなかったんだな、と。「HUGたいそう」するなかでも、ハグが苦手な自分がいて、「あ、ちょっと苦手だな」と思っても、「やだ!」が言えない。でもちょっと勇気を出して言ってみよう。そして、ちょっと勇気を出してハグしてみよう。その折り合いみたいのが経験できたなというのが今日の一番の感想です。すごくいい経験だったなと思っています。

子どもたちはどういうふうに感じてるのかな、「やだ!」って言いやすい状況を大人が作ってあげられてるのかな。そういったことが、体感できたなと思っています。

ジャンジ:ありがとうございます。私も、「やだ!」とか言えなかったり、あと、「オッケー!」も苦手で、ハグも、「ハイ!キング HIKING」のメンバーがいたからできたこと。自分一人だったら、ハグをテーマにしようとはならなかったかもしれない。でもやると、温かい。一方通行ではなくて、お互いにエネルギーを交換している感じがあって、その空気が場に広がっていく。 服を一枚脱いだような感じになれるのが楽しかったな〜。で、書籍『HUG たいそう』のあとがきに、子どもだった時の自分にこういう言葉を伝えたいなと思って、いろいろ書きました。「やだ!」って言っていいんだよとか、そのままで「オッケー!」なんだよって。

 

 

●パートナーシップをやるという表現

ジャンジ:今回おふたりにトークイベントに登壇して欲しいと思ったのは、 おふたりとも自分のセクシュアリティやジェンダーを肯定的に捉えて、表現したり楽しんでいらっしゃるようなところがある。そんなおふたりとセクシュアリティとかジェンダーとか自己肯定感とか表現とかについてお話ししたいと思いました。

タ ッ ク:僕が、ゲイリブっていう概念に出会ったのが 17 歳ぐらいなので、ほぼ 60 年、ゲイリブの思想にどっぷり浸かってやってきた。ゲイリブの中には「ゲイとして自己表現することってものすごい大事だ」「自己表現しないから自分たちの要求が社会に届かないんだよ」っていう考え方がある。なので、やっぱり自分はゲイ的なことを表現したい。そして美術にもすごく興味があったので、美術的なものでゲイであるということを表現するってことを、ずーっとやってきたつもりです。ゲイとしての表現ってなんなんだろうって、ずっと考えてきたつもりです。ゲイであることを受け入れてこの社会で生きていく時に、やっぱり、好きな人とずっと一緒に生きていくっていうことはどうやったら可能なのか、ってことがとっても大切な僕のテーマだった。パートナーシップをやるっていうことも、ある意味の表現なの。そういう意味で、彼と出会って、彼とパートナーという形になっていきたいと思った。共通のなにかものをやる、時間を共有して体験を共有するっていうことが二人の関係をすごく良くしていくという思いがあるんですが、僕が彼と最初に出会った時、彼は社会人入試で多摩美術大学の映像演劇学科に通ってたんです。あの時いくつだった?

伸  二:32 かな。

タ ッ ク:僕も実は、多摩美出身で、出会った時に、 「同じ大学だ!これは使える!」って思った。

ジャンジ:使える!?切り札として?

タ ッ ク:そう、切り札として、「ねぇ、知ってる?先輩の言うことはなんでもきかなきゃダメよ」なんてそんなことを言ってアプローチしていった。その時、彼は卒業制作としてお芝居を一本つくっていたんです。僕は彼と共有の時間が欲しかったので、 「その芝居作りを手伝わせてくれないか、なんでもやるから」と言っていた。彼は、恋愛感情と学業を妙にベッタリさせたくないっておもいがあったので、はっきり断られちゃった。断られちゃったんだけど、僕は共有の時間を持ちたい!と思って、 「そうだ、僕も別に芝居をやってみよう」 と、彼の芝居制作が進んでいくのに沿って、自分で初めて脚本を書いて。

ジャンジ:ええええ!?すごい!

タ ッ ク:それで、ふたり芝居をつくって、それで彼の芝居が上演されている時に、ちょうど僕の芝居も公演する。ほんと僕って思い込んだら命がけみたいなところがあるからさ。で、できあがった僕の芝居が『ちがうタイコ』っていう芝居。

で、まあ彼と長年暮らしをしながら、いつか一緒のことをやりたいねっていってたの。最初の時に芝居を別々にやったけど「ほんとは一緒にやりたかったのに!」って。それで僕がやった芝居『ちがうタイコ』に登場するふたりのゲイが、 10 年後はどうなっているんだろうね、って話していた時に、彼が「あ、僕それ書いてみるよ」って言ってくれて、それでできたのが『トモちゃんとマサさん』っていう静止画ドラマで。それが、実は絵本『ダイアウルフとタイコたたき』につながっている。

ジャンジ:おおおー、すごい!

タ ッ ク:ちょっと長くなったんだけど、絵本『ダイアウルフとタイコたたき』の後ろにはそういう話が流れている。

ジャンジ:おふたりのパートナーシップと表現活動って、一緒に育まれて、今の形になっているって感じですね。

タ ッ ク:まあそんなふうにね。

 

 

●人生の中での最重要問題

伸  二:僕は今 54 歳なんですけれども、大塚とはふたまわりぐらい歳が違って、世代とかもあると思うんですけれども──性格もあるのかな──そんなにセクシュアリティが最重要事項みたいなことではない。ちょうど高校生の時に第一次ゲイブームだった。彼が作った別冊宝島『ゲイのおもちゃばこ』が刊行されたり、映画『モーリス』がはやったり、BL みたいなものがはじまったり。クールまではいかないんだけれど、半分おもしろがられながらも、ゲイみたいな人たちは確かにいる。そして、肯定的なメッセージもあったおかげで、僕もクラスメイトの仲の良い子にちゃらっとかわいらしく「僕、男の子が好きみたい」とか言っても、「あ、そういう人なんだ」「おもしれー」って反応だった。心の中でどう思ってたかはわからないんですけどね。そんなに否定的には捉えられなかったから、人生の中で最重要問題ではなかったんですね。

どちらかというと、世の中ってどうしてお金で回っているんだろうとか、環境問題とか、そういうことの方が重要で、セクシュアリティとかジェンダーとかフェミニズムとかって、社会を測る物差しみたいなものだったかな。ひとまず自分で社会を測ってみたりして。それに、僕が、軽やかでポップな作品が好きっていうこともあって、絵本『ダイアウルフとタイコたたき』を読んだ人には、軽やかに、楽しげに見えてるのかなぁ〜。そう解釈しています。ジャンジさんのありようも、ポップで明るくて。ジャンジさんのなかでは、セクシュアリティとかジェンダーとかいうものが、どうしてこういう形に行き着いたのか、聞きたいなと思うんですけれど。

ジャンジ:そうですね〜。タックさんと同じように、私もセクシュアリティと表現がすごく一緒なんです。私は、世代的には、タックさんと伸二さんの間ぐらいかな。物心ついた時から、戸籍上は女なんだけど、女の子扱いされたり、「女の子は〇〇だ」とか言われるのが嫌だった。サッカー部に入ろうとしたら「女子はダメ」と断られたり、「女の子は赤」とか言われたりする時代だった。

小学生の時は「中性」とか言われてた時があって、それのほうが 「女の子」とか「女子」とか呼ばれるよりマシだった。ずーっとそういうのがよくわからない、よくわからない、と思いながら自己表現を探していた。絵を描いたりとか音楽を聴いたりしていく中で、文化服装学院に通ったのがすごく良かった。ファッションって、体はともかく、表現が自由で、いろんなセクシュアリティの人がいるなかにいれた。18 歳の時に新宿二丁目に行って「いろいろなんだなっ!」「大人にも、 いろんな人がいるんだな!」って体験ができた。

身体をどうするのかっていう問題もあったけど、ホルモン治療とか今みたいに情報がなくて……そんな時にダンスに出会った。ダンスに出会ってはじめて全部が一致したというか。ここにいる自分と、どこか行っちゃっている自分と、心と体と魂が全部一緒になった。そこから、この体でできることしていこうって、ダンスパフォーマンスをするようになった。

 

 

●ドラァグクイーン、新宿二丁目のオネエ言葉

ジャンジ:その頃は、もっともっと男っぽい見た目だったけど、舞台に立つ時に、「ズボンはいて、ノーメイクでいるのはおもしろくない」って思って、どんどんのせていったら、こんな感じになった。

タ ッ ク:へぇ〜。

ジャンジ:それで周りに「ドラァグクイーン」って言われはじめた。知らなかったので調べたら、 「女性性をカリカチュアする」って書いてある。自分は女性器があるけれど、社会が「女は〇〇だろう」っていってくるものを逆手にとってショーをしてきたから、「そうだ」 と。だから、セクシュアリティと表現がすごく密接で。表現があるから今があるって感じですかね。

伸  二:僕とジャンジさんは 10 年以上のお付き合いがあって、akta に遊びに行くと会える人で。

ジャンジ:そうでございましたね。

伸  二:あまり男性性を強く感じなくて、物腰も柔らかくて、丁寧でかかわりやすくて、とても話しやすいんですよね。この前お会いした時、「女性であることに悩んだのに、どうしてそんなにやわらかい──これは僕の古い考えかもしれないけど──女性的な感じでいられるんですか?」と尋ねた時の「これは新宿二丁目のオネエ言葉をやっているんだ」という答えがとても印象的だったんです。このジャンジさんのありようは、男性でも女性でもなく、カリカチュアしたものをやっているという感じなんですか?

ジャンジ:あ〜、もう、なんでもないんですよね。男でも女でもなくて、ドラァグクイーンだからこうっていうのもなくて。 ドラァグクイーンは、好きな色をまとって、好きな形になって、好きなものになるっていう感覚でいて。性別とかも関係なくて。その時表現したいものが、ただそこにある。それが私って感じなんです。

伸  二:うんうん。

ジャンジ:オネエ言葉ってことでは、ずっと「私」って言えなくて。 「僕」とか「ワシ」とか「俺」とかいろんな言葉を使ってみてもあんまりヒットしない、自分を自分の名前で呼ぶのも照れ臭くてできない。だけど、新宿二丁目で、オネエ言葉で誇張してしゃべっているのを聞いた時に、「私」って言葉にこんなに表現力があるんだって。それで漢字の「私」をイメージした一人称なら使えるかなって思えて、それで落ち着いた。性別は、「ジャンジ」って名前を獲得して、それでもう「ジャンジですから」「ジャンジだから」みたいな感じでやってる。 「どこまで通用するの?」って聞かれることもあるけれど、でも「ジャンジです!」って感じ。

 

 

●「まぁ、やるか……」って思わせるような勢い

ジャンジ:で、この服装は「HUG たいそう」のために自分で考えたやつです。接触が苦手な子どもや大人もいるので、手がフワフワしているほうが、ハグとか握手とかしやすいかな〜。胸にお花がついているのは、接触してもお互いに胸のふくらみが気にならないように、とかそういうのを考えて。頭はお花畑。ちょっとわからない人だけど、この人が「さぁ〜!HUG たいそうだよ〜!」って言ったら、「まぁ、やるか……」「しょうがないな……」って思わせるような、 勢いを演出しているんです。

伸  二:私、保育士をしているって紹介にもあったんですが、保育園で働いたことはないんですね。病院とかで、人工呼吸器をつけていたりとか、気管切開していたり、普通の保育園に通えない子どもたちをみています。そこに来るお子さんたちっていうのは、重力がきついんです。呼吸することも食べることもきついんです。お母さんたちが何をしても笑わない、泣いてばっかり。お母さんたちは子どもと向き合うことにへとへとに疲れて、「どうしたらこのこと生きていけるだろうか」って尼寺に駆け込むような感じで来ます。──お母さんお母さんって連呼してごめんなさいね。98%ぐらいはお母さんだから、お母さんって言っているんですけれど──お母さんたちも一緒に参加して、どうやってこの子と遊んでいけばいいか学んでいく場所なんです。私たちは大人だから「ハグしよう」と言われてもヨイショとスイッチ切り替えないとできない。お母さんたちもそうで、最初のうちはとっても緊張感があるんです。でも保育士さんが「さぁ!今日は動物体操だぞ!!」なんて言っているから「ま、やるか」といった感じでやっていく。1年、2年とやっていくと、泣いてばっかりだった我が子が笑うようになってくるんです。スキンシップって楽しいな、体に触れられるのってこんなに気持ちいいんだってわかる。そして「HUG たいそう」にもある「やだ!」 「NO!」の言い方を覚えて、コミュニケーションを覚えていくんです。でもこれって、施設に来て毎日 30 分〜40 分やるだけでは習得できないんですね。家に帰ってからもやってください、って言うんですが、大人なので、二人きりになったらなかなかできないお母さんたちが多いんです。

書籍『HUG たいそう』では、ジャンジが「HUG たいそう」をやってくれているんです。そうすると、 「一緒に本を読もうか」「ジャンジもやってるよ」とか言って、やりやすいんですね。とっても素敵です。そして、ジャンジっていうキャラクターが、子どもが目を引くものが盛りだくさん。性別もわからない、 妖精のようなおもしろい人が、本の中に出てる。「HUG たいそう」を一緒にやって、そして、家でも本を読めば、もう一度同じことができる。すごく良くできた本だと思っています。

僕の思う良い本って、子どもが「読んで〜」って持ってきて、大人も一緒に読める本。そして子どもが読んだ時に、あまり小難しい理論じゃなくてそのままダイレクトに伝わる、子どもの目線になっているもの。そういう本が素敵だなって思っているので、書籍『HUGたいそう』を見た時に、 「あ〜、 いい本でてきたな〜」 って思いました。ぜひ僕の職場にも置きたいなと思っていますし、お母さんたちにもオススメしたい素敵な本です。

ジャンジ:ありがとうございます。私は子どもの専門家じゃないから、保育士を何十年もやってらっしゃる方が、こういう風にコメント寄せてくれたのがすごく嬉しかったです。



 >>>その2に続く → https://onsundays.shopselect.net/blog/2025/07/11/162620

 


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