2022/04/09 13:53
”バリー・マッギーが選ぶ次世代のセブン・アーティスト”展として、第1期が2月に開催された「Someplace Friendly, Someplace Fractures」展。当初からの予定通り第2期、7名の展示がいよいよ4月14日から始まります。
そんなやりとりで、過去のワタリウム美術館での展示や、リボーンアート・フェスティバルへの参加のときもバリーの周りにはいつも若くて個性的でエネルギーに満ちたさまざまな人が集まっていたことを思い出しました。集まった彼ら、彼女たちはそれぞれ独自のやり方で世界や自分自身や彼らが属するコミュニティについての表現をしている。バリーがそんな若いアーティストたちを時にサポートをしたり、あるいは展示の協力者としてヘルプされたりする関係性はとてもオープンでコミューナルなものでした。親子程の年齢の違い、性別、国籍などまったく感じさせないそのリレーションシップのあり方には勇気付けられることも多々あり、実際そうしたなかから、これまでにも多くの若いアーティストが現れ、我々の知るところとなってきました。
今回の展示では、そうしたアーティスト同士のつながりにも思いを馳せながら楽しんでいただければと思います。
<DAISY MAY SHEFF>
デイジー・メイ・シェフ(1996年生まれ)は、2018年にUCLAでBFAを取得し、シルケ・オットー・ナップ、ラリ・ピットマン、バーバラ・クルーガーらに師事した。2014年以降、多くのグループ展に参加。作家自身は1960年代にフォークアートや民間の手芸工芸を取り入れ、ヒッピーカルチャーの影響のもとに北カリフォルニアで勃興したアート・ムーブメント「NUT ART」への強い関心を表明している。2021年ニューヨークでの初個展(WHITE COL LAMUN画廊)に続き、サンフランシスコのRatio 3にて西海岸初の個展「Hid It Well in a Walnut Shell」を開催。現在はカリフォルニア州インバネスを拠点に活動。ブリンキー・パレルモという名の犬と暮らす愛犬家。
"River Bank and Bow Dress(seen from Above)"
2021, Oil and glass beads on canvas, 30.5 X 41.0cm
<KAREN BARBOUR>
カレン・バーバーは1956年、カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。サンフランシスコ芸術学院で修士号を取得。彼女のペインティング作品は、現実の生活とファンタジーに関連した不思議な物語を、ダークな中にもユーモアを交じえて描いたもの。キャンバス以外にも鏡や朽ち果てた材木、などさまざまなマテリアルで制作している。イラストレーターとしても評価が高く、子供向けの本のイラストレーターとして受賞歴がある。「Marvelous Math: Poems selected」は、Parents' Choice Gold Awardを受賞している。現在はカリフォルニア州ポイントレイズ在住。
"Untitled(Black Puppy)”
2021, Oil on Canvas, 35.0 X 27.5cm
<PETER GRAY HURLEY>
ピーター・グレイ・ハーリーは1984年生まれのミュージシャン/アーティスト。サンフランシスコのLO-FIインディーポップ・バンドAPRIL MAGAZINEのメンバーとしても活動している。グラフィティやアンダーグラウンド・コミック、本や音楽、知人の顔や身体など作家が日常触れるものからインスピレーションを得て、それぞれのイメージの中に潜んでいる相反するムードに文脈を与え発展させるような絵画を制作している。自らがストリートで見つけ出した捨てられたポスターや拾った板切れを作品に用いることも多い。最近はアンリ・マティスの抽象画にハマっているらしい。現在サンフランシスコ在住。
“Blue Bird"
2021, Oil on found paper, 22.8 X 30.4cm
<NICK JASKEY>
ニック・ジェスキーは1982年ミシガン州ロイヤルオーク生まれ。2001年からデトロイトに移り住む。10代の頃はスケートボードとともに育ち、街を探検して混沌とした現代社会の中で気づかれずにいる細部を見つけることに熱中した。同時にグラフィティ、アート、写真に興味を抱く。街頭で目にするこれらのディテールは、彼に影響を与え、やがてその活動をファインアートへと移行させていくことになった。彼の作品は全米各地のギャラリーや美術館で展示され、バリー・マッギーの序文を得て出版された写真集『Signs of Life 』(2017)は、JuxtapozとDetroit Metro Timesの両方で紹介されている。今回展示される作品は「自動車産業の街、デトロイトのクロニクルとして制作したもの」とのこと。
"Car Piles 1”
2021, Water color on Paper(Collage), 22.8 X 30.5cm
<TYLER ORMSBY>
タイラー・オームズビーは1994年カリフォルニア州ヴァレホ生まれ、現在はサンフランシスコ在住。海岸に面した小さな町で育ち、マウンテンバイクやスケートボード、サーフィンに親しむ。ペインティングのほかセラミックの作品も手がける。2017年のリボーンアート・フェスティバルの際にバリー・マッギーのアシスタントとして来日。その際に地下のオン・サンデーズでTOY GRAFFITI(ヘタウマなグラフィティ)的な作品をバリー・マッギーやDIEGO、 フランチェスコ・ディアナ、デレク・マーシャルらと共に即興的に制作。一夜にしてオン・サンデーズの大きな壁面を埋め尽くした。
"Untitled Paintings(Green Bottle, Four Vertical Lines, Three Whirpool)”
2022, Oil on Canvas, 20.0 X 25.0cm
<FRANCESCO IGORY DEIANA>
1986年、ミラノ生まれ。イタリア出身のフランチェスコ・ディアナは、創造的な自由を求めてアメリカに渡り、サンフランシスコ、ロサンゼルスを経てニューヨークに移り住んだ。サンフランシスコではバリー・マッギーのスタジオで働く。マッギーの展覧会にあわせて世界中を旅行し、学校では学べないようなアート制作の人生について学ぶ。ディアナの作品の多くは、形や奥行きを表現するサイケデリックな形象を持ちながら、主にグレー(あるいは単一)の色彩で表現されることが多く、その参照元やメディアの曖昧さにおいて光学的な暗示を鑑賞者に与える。
"Untitled”
2020, Gesso, pencil and latex on wood board, 35.0 X 27.5cm
そして今回、日本からの唯一の参加となったのがDIEGO!
バリーとは2017年のワタリウム美術館でのバリーとクレア・ロハスの二人展「BIG SKY LITTLE MOON」のサポートに参加したことをきっかけに、以降リボーンアート・フェステイバルなどでも制作に協力している。
街の中に独自の視点で表現を仕掛け続ける「日本のストリートシーンにおいて、もっとも風変わりなアーティスト」
絵画や壁画というビジュアルアートから、街の中のグラフィティ、そしてコンセプチュアルな作品まで活動の幅を広げている。そして近年はSIDE COREの一員としても活動。2021年、ワタリウム美術館での「まちへ出よう展 〜それは水の波紋から始まった〜」展では仮説の小屋を会場内に設置し、その内外をグラフィティ、写真、ファウンド・オブジェ、映像、監視カメラなどで覆い尽くすインスタレーションを発表した。
“Found Light”
2021, Acrylic, Oi-lchark and Spray paint on Canvas
90,0 X 90.0cm
また今回の展示、サンフランシスコ、カリフォルニア以外のデトロイト、ニューヨークと離れた地域に住んでいる作家との連絡や作品の搬送をコントロールしてくれたRatio 3のHaegen Crosby氏のサポートには大いに助けられた。映像作品をシェアしてくれたDerek James Marshallにもビッグ・サンクスを捧げたい。そしてフレッシュなアーティストたちを紹介してくれ、印象深い展覧会タイトルとアートワークまでを贈ってくれたバリー・マッギーに心からの感謝を!
<展覧会>
Someplace Friendly, Someplace Fractured PHASE 2
バリー・マッギーが選ぶ次世代のセブン・アーティスト/第2期
会期:2022年4月14日(木)〜5月31日(火)
会場:ライトシード・ギャラリー(ワタリウム美術館B1)
キュレーション:バリー・マッギー
映像協力:デレク・マーシャル
協力:ハーゲン・クロスビー(Ratio 3)