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2021/10/05 13:45

基本的に「常設展示」を行っていないワタリウム美術館ですが、じつは唯一の例外があるのです。それは美術館4階のトイレの中、壁一面に貼り巡らされた幾何学模様のタイルです。ミニマル/コンセプチュアル・アートを代表するアメリカ人アーティスト、ソル・ルウィットが1990年にワタリウムの要請に応えて制作したもので264枚が制作されました。


ルウィットといえば幾何学的な形態の反復とそのバリエーションを導入した「ウォール・ドローイング」から、同様の形態を3次元空間に展開した「ストラクチャー・シリーズ」まで、様々な媒体を用いて20世紀後半の現代美術の潮流に不可逆的な影響を与えた作家です。作品制作を第3者に委ねる形でおこない本人が直接制作作業に関わることをしない、いわゆる「インストラクション(指示書)」によるインスタレーションを行った最初の世代のアーティストでもあります。さらに1976年、批評家のルーシー・リパードとともに、今もニューヨークにその唯一無二の品揃えで世界中からビブリオフィルを引き寄せている独立書店「プリンティド・マター」を設立した人物でもあります。

ワタリウムとの所縁は1980年の「6つの幾何図形の4つづつの組み合わせのすべて」(ギャルリー・ワタリ)にはじまります。その後美術館のコレクションとして「ウォール・ドローイング(1980)」「ピラミッド・ドローイング(1985)」「15A(1985)」「ピラミッド(1986)」などの作品が収蔵されました。1992年の「アイ・ラブ・アート2」展ではアーティスツ・ブックの作り手というルウィットのもう一つの(そして重要な)側面が紹介されています。




ワタリウム美術館の地下書店オン・サンデーズには範と仰ぐ書店がいくつかあり「プリンティド・マター」はその中でも特別な存在です。オン・サンデーズのスタッフがはじめて訪れたのは1980年ですが、その時の印象は『本屋というよりは本の付録屋といったほうが良いようなナゾの店』というもの。それから40年が経ちルウィットも2007年に他界してしまいましたが、彼の残した作品と同じように、自ら制作したアーティスツ・ブック、あるいは作品のコンテクストを尊重して編まれた幾多の作品集はいまも我々をうっとりとさせる魅力をもつ印刷物であり続けています。







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